休眠預金活用事業
【助成レポート】キッチンカーでGO!/NPO法人ワーカーズコレクティブういず
いまこそ必要な活動なのに…
2004年の団体設立時から、「地域交流支援」「高齢者生活支援」「地域子育て支援」の3つの事業を展開してきたNPO法人ワーカーズコレクティブういず(以下〈ういず〉)。コロナ禍により活動の停止を余儀なくされ、運営するこども食堂や高齢者の通いの場が閉鎖されても、団体のもとには高齢者うつや認知症、子どもへのネグレクトを心配する声が届いていました。子どもと高齢者の問題は、コロナ禍により深刻化していたのです。「『いまこそ必要な活動なのに…』と思っていた時に休眠預金緊急枠助成金を知り、キッチンカーを購入して活用することを考えました」と、理事長の北田惠子さんは当時を振り返ります。

設立時から、助成金は積極的に活用してきたという〈ういず〉。過去にも金額の大きな助成を受けた経験はありましたが、物品購入だけでなく人件費や家賃に充てることができるこの助成は「望んでいた助成の形」であったそうです。一方、他の助成金とは違う大変さもあったと北田さんは言います。「これまで苦手としていた会計や規程類の整備、ホームページの作成など、この助成を機にきちんと向き合うことで、団体の基盤強化につなげることができましたが、やはり大変でした。でも、それを乗り越え、想定を超える成果を感じられた時は『大変だったけどがんばってよかった』と思えましたね」
表れ始めた成果
キッチンカーの運用開始から2ヶ月、成果はコロナ禍前にはなかった「地域からの寄付」という形で表れ始めました。共感の声も寄せられるようになり「『私たちの活動が地域に必要とされているんだ』と実感した」と北田さん。また、コロナ禍前はこども食堂に対する偏見を感じることもありましたが、子どもたちの自粛生活が続く中で、黄色いキッチンカーでのお弁当配布を家族ぐるみで楽しんでくれる人が増えたことも良い変化だったといいます。さらに、団体の思いがキッチンカーという形になって見える化したことで、スタッフ同士で目的を共有しやすくなったという効果もあったそうです。キッチンカー事業は、〈ういず〉が設立以来大切にしてきた「いっしょに働いて、みんなで共感する」という姿勢の実現にもつながりました。

たすけあい、支えあうまちづくりを目指して
現在、柏市の松葉町と大津ヶ丘の2拠点を中心に移動するキッチンカーは、子どもや高齢者への食の提供という役割だけでなく、困りごとをひろったり、地域のコミュニケーションを深めたりする場としての役割も担っています。〈ういず〉は長年、「人と人を結び、地域でたすけあい支えあうまちづくり」を目指して活動してきました。北田さんは「『私たちが目指してきたまちづくり』『これまでの活動の積み重ね』『コロナ禍での活動』、これらのエッセンスがひとつにまとまったものがキッチンカーなのではないか」と言います。「子ども・親・祖父母の3世代がキッチンカーや居場所を利用してくれている姿を見ると、これを続けていけばSDGsが自然と体現されていくのではないかと感じます。地域コミュニティのモデルのひとつとして、地域の人にも感じてもらえる仕掛けをつくることが今後の課題ですね」

多くの人がアフターコロナへ向かって歩き出すなか、さまざまな要因で取り残されてしまった人や、疎外感や孤独感から抜け出せないでいる人への支援の重要性が高まっています。それぞれの拠点を「 結(ゆい)」と名付けた通り、結(つなぐ)という言葉をキーワードに活動してきた〈ういず〉。コロナ禍で分断されたつながりを再びつなげるために、そして、たすけあい支えあうまちづくりの実現を目指して、黄色いキッチンカーと〈ういず〉の活動は続きます。