【開催報告】休眠預金活用事業2020年度通常枠「社会的養護下にある若者に対する社会包摂システム構築事業」成果報告会

これまでの助成 REPORT

休眠預金活用事業

【開催報告】休眠預金活用事業2020年度通常枠「社会的養護下にある若者に対する社会包摂システム構築事業」成果報告会

2024.04.19
助成実績
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公益財団法人ちばのWA地域づくり基金では、20214月より千葉県内の4つの実行団体とともに休眠預金を活用して「社会的養護下にある若者に対する社会包摂システム構築事業」を実施、休眠預金を梯子に地域の多様なステークホルダーが連携して、ネットワーク構築や新たな事業創出にチャレンジし、将来的には社会的養護下にある若者が円滑な社会生活を送ることができる社会をつくることを目指してまいりました。

本事業の完了にともない、この3年間の成果を本事業に関わってくださった方々・ご関心を寄せてくださった方々へご報告するために、また、さらなる支援の輪を広げるために成果報告会を開催しました。

開催概要

日時:2024318日(月)13:0017:00
会場:メイプルイン幕張 研修室
参加者:37
満足度:4.775段階評価)
主催者:公益財団法人ちばのWA地域づくり基金

♦プログラム♦
1  開会  ご挨拶  公益財団法人ちばのWA地域づくり基金 専務理事・事務局長 志村はるみ
2  休眠預金活用制度の概要と活用状況  一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)
3  資金分配団体報告
・「社会的養護下にある若者に対する社会包摂システム構築事業」
           公益財団法人ちばのWA地域づくり基金 事務局長 志村はるみ
4  実行団体報告 
・「こころをつなぐアフターケア事業」 一般社団法人はこぶね
・「社会へ『いっぽ』を踏み出す基盤づくり事業」 一般社団法人いっぽの会
・「大人のTERAKOYA」 株式会社ベストサポート
・「ちば子ども若者アフターケアネットワーク」 ちば子ども若者アフターケアコンソーシアム
    【 休 憩 】
5  ワールドカフェ
   関心のある実行団体のテーブルでの対話(20分間×2セット)と全体共有
6  ゲストコメント
7  閉会のご挨拶 公益財団法人ちばのWA地域づくり基金 理事長 牧野昌子
 
司会:元吉智子(公益財団法人ちばのWA地域づくり基金)
撮影:西岡千史


開催報告

平日昼間の開催にもかかわらず、児童養護施設やファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)の職員の方、県内外のNPOの方、行政の方、また、実行団体や当財団に関わりのある方など、多くの方にお集まりいただきました。

最初に開会のご挨拶として、当財団専務理事・事務局長の志村よりこの会の趣旨と本事業に関わってくださった皆さまへ感謝を申し上げました。

会場の様子

【休眠預金活用制度の概要と活用状況(JANPIA)】
発表者:安達空さん(JANPIA プログラムオフィサー)

本事業を理解していただくためには「休眠預金活用」という制度の理解も不可欠です。そこで今回の成果報告会ではまず最初に、指定活用団体である一般財団法人日本民間公益活動連携機構(以下、JANPIA)のプログラムオフィサー・安達空さんに、休眠預金活用制度の概要と活用状況を説明していただきました。安達さんは本事業の担当者として、ちばのWA4つの実行団体を3年間見守ってくれた方でもあります。

千葉県内での休眠預金の活用は20233月時点で52事業と、東京都(71事業)・長野県(58事業)に続く多さで、内訳をみると、千葉県所在の資金分配団体からの助成事業は半数弱(23事業)となるそうです。このデータは私たち資金分配団体にとっても大変興味深いものでした。

JANPIA安達さん

【資金分配団体(ちばのWA地域づくり基金)報告】
発表者:志村はるみ(専務理事・事務局長)

次に、資金分配団体より本事業「社会的養護下にある若者に対する社会包摂システム構築事業」の報告を行いました。
最終年度に入ると、本事業は実行団体の活動により〈社会的養護の若者〉〈地域住民〉〈企業〉〈児童養護施設〉〈支援者〉に何かしらのポジティブな変化を与えていることが見えてきました。事後評価ではそれらの変化がアウトカムにつながっているかを確認するため、数だけでなく質的な変化も抽出し分析。各実行団体の成果をひとつにまとめて俯瞰して見ると、とても大きなインパクトが生まれていたことがわかり、それらの詳細は事後評価報告書で報告しています。
報告の最後では、本事業の概要や成果をわかりやすくまとめたレポート冊子「Topos とぽす」と、冊子の編集・デザインに携わってくださった西岡千史さんと稲村絵美里さん(株式会社スロージャーナル)をご紹介。この日完成したばかりの「Toposとぽす」はご参加いただいた皆さまへお配りいたしました。

chibanoWA 志村
Toposと稲村さん

【実行団体の報告】
実行団体の報告+資金分配団体プログラムオフィサー 大村(以下、担当PO)のコメント

こころをつなぐアフターケア事業-あなたととも(友)にいる『オトモダチ作戦』」 一般社団法人はこぶね
発表者:ペ・スヨンさん

はこぶねの支援を受けた若者が会場で見守る中、事業の中心メンバーのひとりであるペ・スヨンさんが成果を報告。
事業の実施により、「若者」「大人」「組織」にどのような変化を生み出すことができたのか、また、現時点での課題(人件費の確保等組織の持続性)や、今後の展望(若者への就労支援等)を発表してくれました。

はこぶね

〈担当POコメント〉
「初年度、2年度目は新型コロナの影響が大きく、はこぶねさんの事業の中心となるはずだった〈児童養護施設への訪問〉が思うようにできませんでした。とても辛い期間だったと思いますが、事業計画を変更しながら実績を積み重ねたことが、3年目からの施設訪問を可能にしたのではないかと思います。また、はこぶねさんはこの事業を通じて地元の企業の協力をたくさん得ることができました。地域の中小企業も以前に比べて社会貢献に関心を持っていらっしゃることがわかったのは、私たちにとっても大きな気付きでした。」

ちばのWA大村

「社会へ『いっぽ』を踏み出す基盤づくり事業」 一般社団法人いっぽの会
発表者:代表・久保田尚美さん、朝日 仁隆さん、古澤肇さん

「若者応援ハウスIPPO柏について」「地域で社会的養護の若者を見守る環境をどのように構築したのか」「組織が抱える課題」などを発表しました。伴走支援付きシェアハウスともいえる若者応援ハウスIPPO柏は、ここで過ごした若者にとっての「実家」のような存在にもなっているそうです。シェアハウスと地域で見守る若者支援の継続のために、国の社会的養護自立支援拠点事業にもチャレンジしていきたいと今後の展望も話してくれました。

いっぽの会

〈担当POコメント〉
「地域に開いていく、根差していく方法はいろいろあると思いますが、いっぽの会さんは地域のキーパーソンとつながるだけではなく、キーパーソンと自分たちの関係性を地域の人たちに地域の中で見せていくことで信頼を広げていく、という方法が巧みだったと感じました。この方法は、地域に根差していくことを目指す団体・事業においてはとても参考になるのではないかと思います。」


「大人のTERAKOYA」  株式会社ベストサポート
発表者:代表・竹嶋信洋さん

ベストサポートが本事業で取り組んだのは、シェルター・居場所・就労支援プログラム「きみらぼ」の3つです。3年間の事業の実施から、特にシェルターと就労支援は大切だけれども社会資源として足りていないことがわかった、と竹嶋さん。課題であった事業の継続については、自立援助ホームの開設や就労支援を様々なステークホルダーで支える「きみらぼ友の会」を発足させて進めていきたいとのことです。

ベストサポート

〈担当POコメント〉
「コロナの不安が残る中でも人が集う形の就労支援を計画通りに実施されたこと、さらに実施を通して着実に県内の児童養護施設や企業の理解を広げていったこと、そして、ターゲットである社会的養護の子ども若者に支持されるプログラムを作れたことはもちろん素晴らしいですが、その成果を生んだ背景には『事前評価』を時間をかけて実施し、ニーズを把握した上で事業を実施したというベストサポートさんの努力があります。ニーズの把握の大切さがわかる好事例として、今後の私たちの伴走支援にも生かせるのではないかと思います。」

「ちば子ども若者アフターケアネットワーク」  ちば子ども若者アフターケアコンソーシアム
発表者:安井飛鳥さん(コンソーシアム代表)

県内の社会的養護の若者の支援へのつながりにくさの解消とアフターケアの標準化を目指したちば子どもアフターケアコンソ―シアム(以下、子若)。そのために実施した「支援者間の連絡会や勉強会」「個別の支援事例を通じた連携の蓄積」の内容と、それにより生まれた成果と課題、そして今後の展望が発表されました。本事業で開設した子ども若者と支援者が交流する拠点スペース(きょてん)では、支援者に対して「支援禁止」をルールとしていますが、それは支援者が鎧を脱ぎ若者と対等に接するためという意図があるのだそうです。「子ども若者と支援者がともに癒され楽しむ場所」という言葉が印象に残りました。

子若

〈担当POコメント〉
「4つの実行団体の中で唯一のコンソーシアムとして本事業に参画してくださいましたが、3年間をコンソーシアムという形で熱量を保ちながら走られるのはとても大変なことだったと思います。実際に子若さんからも運営に関してのご相談がありましたが、私たちもコンソーシアム運営の知見を持ち合わせていないため運営面でのご支援が十分でなかったと感じています。また、他のコンソーシアムとのピアラーニングの開催をJANPIAさんと模索したものの実現に至らなかったことも残念でした。」

【ワールドカフェ】
関心のある実行団体のテーブルに着席して対話するワールドカフェ。参加者の皆さんには4つの実行団体の中から2団体を選んで対話していただきました。

ワールドカフェ1

ワールドカフェについてはアンケートでも、
「ワールドカフェで参加者それぞれの視点で実行団の取り組みから価値を見つけることができた」
「団体さんと直接コミュニケーションを取ることができ、学びが多かった」
「団体の生の声を聞けた」

などの好評の声を多くいただくことができました。

ワールドカフェ2
ワールドカフェ3

前段の発表は時間が限られていたため、参加者には「団体に疑問点や不明点を直接聞いてみたい」と思う方もいらっしゃったようです。私たちはテーブルには着かず、少し離れたところからワールドカフェの様子を見ていたのですが、質問や感想のひとつひとつに丁寧に答える実行団体の姿にこの3年間の伴走支援を思い 出し胸が熱くなりました。

ワールドカフェ4
ワールドカフェ5

【ゲストコメント】
本事業の選考委員とJANPIA事業部長和田泰一さんよりコメントをいただきました。

小松孝之さん(本事業選考会 議長/ちばぎん総合研究所)

  • 3年前の選考の際は、落とす選考ではなく選考委員全員で「どうやったら事業がよくなるか」と知恵を出し合ったことを思い出しました。当時の事業計画から考えると、たとえ目標の三分の一程度の達成だったとしても成果といえるのではないでしょうか。
  • 各団体の発表から、地域の企業・協力者・キーパーソンの発掘が大事だということがわかりました。市の施策づくりの参考にしたいと思います。
ゲストコメント1

清水洋行さん(本事業選考委員/千葉大学)

  • 事業名にある「社会包摂システム」についてあらためて考えてみました。「社会包摂」とは排除、はく奪しない/されないということ。「個別につながりを作る(はこぶね)」「地域資源(アセット)の活用(いっぽの会)」「さまざまな企業とのつながり(ベストサポート)」「支援者の連携(子若)」これらの事業が、排除、はく奪しない/されないシステム」につながるのだと感じました。
ゲストコメント2

粉川一郎さん(本事業選考委員/武蔵大学)

  • 3年2000万円という金額の大きな助成でしかできない成長(拠点整備と責任)があるのだと感じました。
  • ボランティアが事業や組織に対して時間を拠出すると「こうなる」ということが発表から見えて来たと思います。はこぶねさんが「自分には取り柄は無いけれど時間はある」という自団体のボランティアの言葉を紹介していましたが、まさにこれはボランタリズムの基本ではないでしょうか。
  • 選考時を知っているだけに、実行団体から「アウトプット」「アウトカム」という言葉を聞くことができ感慨深かったです。休眠における評価のスキームが良かったこともあると思いますが、ちばのWAの非資金的支援も良かったのでしょう。昨今、評価の世界では「定量+ナラティブ」がトレンドです。今日、実行団体の皆さんが語ったようなナラティブな評価は今後重要になっていくと思います。

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和田泰一さん(JANPIA 事業部長)

  • 普段、書類から皆さんの活動を知ることが多いのですが、今日は生の声を聞くことができて良かったです。
  • 発表では「つながる」という言葉が多く出ていました。本事業のキーワードだったのだろうと思います。
  • 誰かひとりのスーパーヒーローがいたから成果を出せたというわけではないことが発表を聞いてよくわかりました。そのことが資金分配団体の事後評価報告書に書き込まれていると良いのではないかと思います。

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【閉会のご挨拶】
最後に資金分配団体を代表して当財団理事長の牧野昌子より、この3年間にご助言・ご協力いただいた方への感謝と、実行団体の皆さんのさらなる発展への期待を申し上げ、報告会は終了いたしました。

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*****

ご参加いただいた方々からは、事業の評価や励ましの言葉をいただき、実行団体のみなさんもこの3年間の取り組みに自信を持てたようでした。本事業で得た成果、つながりを活かして今後の活動を継続・発展してくださることと思います。そして、私たちもこれを終わりとせずに、千葉のコミュニティ財団として引き続き連携協力していきたいという想いを確認する機会となりました。
私たちにとっても初めての経験となった3年間の複数年助成。この期間に得た伴走支援での学びは、本年4月から始まる休眠預金活用事業「若年就労困難者のための包括的就労支援事業」に活かしていきたいと思います。

最後に、3年間ともに歩んでくださった実行団体とJANPIAの皆さま、選考委員の皆さま、さまざまな形で事業にご協力いただいた皆さまに、心から感謝申し上げます。

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