【団体視察レポート】「人が仕事に合わせるのではなく、人に合わせて仕事をつくる」―チャイ専門店 Talk with _(一般社団法人NIMO ALCAMO)

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【団体視察レポート】「人が仕事に合わせるのではなく、人に合わせて仕事をつくる」―チャイ専門店 Talk with _(一般社団法人NIMO ALCAMO)

2026.06.26
助成レポート

「働きたいのに、働けない」。
そんな状況を抱える若者を、地域の力で支えることを目指す「若年就労困難者のための包括的就労支援事業」。過去2回のレポートでは、働きづらさを抱える人の「働き始めてから」を支える企業の取り組みをご紹介しました。

今回ご紹介するのは「新しい働き方と仕事をつくる」ことを事業の中心に据える、一般社団法人NIMO ALCAMO(大阪市住之江区)。
同法人が運営するチャイ(※1)専門店「Talk with _」では、「ワークルールシフト(人が仕事に合わせるのではなく、人に合わせて仕事をつくる)」という発想のもと、シフトフリー・アバター接客・ワークシェアリングといった新しい働き方が実践されています。

2026年6月2日、ちばのWAの職員3名に加え、千葉県中小企業家同友会「障がい者雇用と多様な働き方を考える委員会の小野田直さん(株式会社エーゼットファクトリー代表取締役)、そして「若年就労困難者のための包括的就労支援事業」の実行団体である認定NPO法人キャリアデザイン研究所の石黒崇之さんにもご参加いただき、3時間にわたって現場を見学、お話をうかがいました。
(プログラムオフィサー 大村みよ子)

※1:インド発祥のスパイスティー。紅茶にカルダモン・シナモン・生姜などのスパイスとミルクを合わせて煮出したもの。

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大阪市営地下鉄北加賀屋駅から歩いて数分。かつての工場地帯を活用したアートの街として知られるこのエリアに、「Talk with _」はあります。
人の暮らしを感じる街角に建つ、古い長屋を改装した店舗。
中に入ると、木のぬくもりを感じるインテリアとスパイスの香りが迎えてくれます。

「ここに来ることが『誇らしい』と思えるような場所にしたかった」と話すのは一般社団法人NIMO ALCAMO(以下 NIMO ALCAMO)代表理事の古市邦人さん。

好きな本を一冊持ってきて、チャイを飲みながらゆっくり過ごしたい。そんな気持ちが自然と湧いてくる場所です。

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誇らしいと思える場所、誇らしいと思える仕事

NIMO ALCAMOはもともと、大阪市東住吉区でカレー店「nimo alcamo」を運営しながら、働きづらさを抱える若者の就労支援に取り組んできました。2023年、その実践をさらに深化させる形でオープンしたのがチャイ専門店「Talk with _」です。

「Talk with _」では、通常の雇用契約ではなく業務委託という契約形態で働く人を受け入れています。業務委託は雇用契約と異なり、企業側が「何時に来てください」「こう動いてください」と指示命令をすることができませんが、代わりに「この仕事を、この納期までに仕上げてください」という納品ベースで仕事を依頼します。これにより、決まった日時に出勤するシフトを組まずに済む「シフトフリー」という働き方が実現します。

いつ来ても、いつ帰ってもいいように、24時間対応のスマートロックで誰でもチャイ製造室に入れる。こうした環境が、従来の雇用の枠では働けなかった人たちに働く場を開いています。

扱う商品を、製造の習熟度が比較的低くて済むチャイにしたのもポイントです。
「スパイスと茶葉の調合はグラム数を量って行うので、手順を覚えれば誰でも一定の品質でつくれます。カレーの場合、複数のメニューをこなすためのスキルの習得や研修に時間がかかるので、業務委託という働き方と相性が悪い。チャイなら研修が短時間で済み、人が入れ替わることを想定しても成り立つんです」と、古市さんはいいます。

ある程度人が入れ替わることを想定した上で、研修の負荷が低く、シフトフリーの働き方と相性のいい仕事。「チャイ」はその条件を満たした答えでした。
そして「この仕事に誇りを持てる」という要素も、古市さんにとって大切な条件だったといいます。

ここで働いていると誰かに言えるかどうか、自分の仕事を誰かに自慢できるかどうか。
その基準が、場所づくりにも仕事づくりにも反映されているように感じます。

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代表理事の古市邦人さん

すべての人は働ける、仕組みがないだけ。

古市さんは以前、大阪のNPO法人が運営する地域若者サポートステーション(サポステ)の運営に携わっていました。そこで出会った若者の言葉が、今の活動の原点になっています。

サポステは通常、半年から1年で就職を目指す場所ですが、2年3年と通い続ける若者がいました。担当カウンセラーに聞くと、こんな答えが返ってきたといいます。
「働きたいという気持ちはあるんですが、働ける仕事が無いと言うんです」
働きたい気持ちはある。でも、働ける仕事がない。
この言葉が、古市さんの中にずっとひっかかり続けました。

従来の就労支援では、本人が「働けるレベル」に達するまでトレーニングを続けることが中心で、それがうまくいかない時には、障害者手帳を取得して福祉的就労を目指す場合もあります。
「本当にこの仕組みがベストなのだろうか。トレーニングを重ねても次のステージに進めない状態が続くのは大きな社会損失なのではないか」その疑問は、古市さんの中で膨らんでいきました。
「『一定の基準にならないと働けない』といって、ずっとトレーニングしている。でも、その基準の高さってどこから来てるんだろう」。その基準を変えてしまえばその人は働けるのではないか、と古市さんは考えました。

「私は、基本的にはすべての人は働けると思っています。ただ、その人が働ける仕組みが世の中にないだけ。だから、仕組み側を変えようと思ったんです」。

2020年に独立した古市さんは、当時副業として経営していたカレー屋を拠点に活動を始めました。
そこでもサポステからの職場体験を受け入れ、「働けない、働きづらい」その理由を若者たちと対話し続けました。

そこからわかったのは、働けない理由には、共通するパターンがあるということでした。その気付きをもとに、2023年、「働くルールを変えること」を第一に設計した拠点として生まれたのが、このチャイ専門店「Talk with _」です。

独立の際に決めたのが、「本人支援はしない。仕事をつくろう」という基本方針。そして「働く場から排除されてきた人が、新しい仕組みで働き、活躍し、見返す機会をつくる」というステートメントです。
現在、カレー屋「nimo alcamo」と「Talk with _」の2店舗で、サポステなどから十数名程度(職場体験や中間的就労※2)を受け入れています。

※2:すぐに一般企業で働くことが難しい人々を対象に、日常生活の自立や社会参加を促す就労体験や軽作業を提供する制度

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冷たいチャイをいただきながらお話しを伺いました。

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自宅でもチャイを楽しめるように、茶筒に入ったタイプ、シロップタイプ、ティーバックタイプ(写真)も販売されています。使用されている茶葉は、左からほうじ茶、奈良・インド産の紅茶、奈良・台湾産の烏龍茶。茶葉やスパイスの分量でチャイの味や風味が変わります。

シフトフリー、アバター接客、ワークシェアリング ― ルールを変えると、人は働ける

現在、「Talk with _」では3つの働き方が実践されています。どのようなきっかけで新しい働き方が生まれたのでしょうか。

まず、24時間いつ来ていつ帰ってもいい、納品制の働き方のシフトフリー
この仕組みのきっかけになったのは、ひとりの男性との出会いでした。適応障害で電車にも乗れなくなり休職中だった40代の元ホテルマンの男性は、月に2〜3日だけ朝起きられない日があるという問題を抱えていました。
「一日職場体験に来ていただいたら、本当に素晴らしい接客をされるんですが、ご本人は『まだ働けません』とおっしゃる。なぜかと聞くと、『朝起きられずにシフトに穴をあけることが怖くて』というんです」。
古市さんは思いました。
「月28日間、完璧な接客ができる人が、いつ来るかわからない2〜3日の不調のせいで働ける時間がゼロになっている。これは社会の損失だ」。
シフトで働くという慣習がこの人の可能性を奪ってるのであれば、シフト自体を無くせば働けるはずだと考え、納品制・業務委託という仕組みを設計しました。

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シフトフリーで働く様子(写真提供:一般社団法人NIMO ALCAMO)

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スマートキーにより24時間いつでも仕事ができます(写真提供:一般社団法人NIMO ALCAMO)

さらに印象的な取り組みが、アバター接客です。
ある30代の元販売員の女性は摂食障害を抱え、人から見られることに強い不安を感じていました。
そこで導入したのが、アバターを使った接客です。現在は、アルビノなど見られることに不安を感じる方が予約制チャイワークショップをアバターで担当しており、これまで、お客さまからの不満は接客面も含め一切ないといいます。
見た目の問題(※3)を抱える当事者は日本国内だけでも100万人ほどいると推計されており、アバターという手段はその人たちへの選択肢にもなりうると古市さんは話します。

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アバター接客によるチャイワークショップ(写真提供:一般社団法人NIMO ALCAMO)

また、「三割の力でしか働けない」という大学生の言葉は、あらたな仕組みを生み出すきっかけになりました。

バイト先で怒られて「三割の力で音楽を聴きながらだったら働けるのに」と話す彼の体験を聞いた古市さん。彼が「なぜ怒られたのか」を掘り下げていくと、見えてきたのは「最低賃金」という制度でした。「最低賃金が上がることは働ける人にとってはいいことですが、働けていない人にとっては、仕事のハードルが年々上がっていくということでもあるんです。三割の力でしか動けない人は、経済合理性によって排除されていく」。
だったら、三割の力で働ける仕組みをつくればいい。と考えたのが、一つの仕事を複数人でわけるワークシェアリングです。ひとりあたりの業務量を三分の一にして業務委託で働きます。

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ワークシェアリング(写真提供:一般社団法人NIMO ALCAMO)

これまで、シフトフリーでは5名が、ワークシェアリングでは19名が働いてきました。アバター接客は、現在3名が登録しています。

そして、開店当初は月数千円規模だったシフトフリーの報酬も、この春、初めて月10万円を支払えるケースが生まれました。

 

※3:顔や体に生まれつきアザがあったり、事故や病気による傷痕、変形、欠損、麻痺、脱毛など「見た目(外見)」の症状がある人たちが、「見た目」を理由とする差別や偏見のせいでぶつかってしまう問題。(出典:NPO法人マイフェイス・マイスタイル)

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製造室には茶葉とさまざまなスパイスが並んでいました。

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スタッフの作業着は煮だした茶葉で染めています。

ワークルールシフトスクール ―「排除の壁」を可視化する

Talk with _」での取り組みが知られるようになると、他の就労支援団体からも「うちでもやってみたい」という声が相次ぐようになりました。「現場を見せてほしい」「仕事のつくり方を教えてほしい」という問い合わせが続く中、古市さんと理事の木戸伸幸さん(WORK RULE SHIFT KYOTO共同代表)が始めたのが「ワークルールシフトスクール」です。

 

半年間のゼミ形式で、現在、東京・大阪・京都・鳥取・奈良など、地域も規模もさまざまな団体が、それぞれの対象者に合わせた「仕事のつくり方」を学んでいます。スクールの参加者は21名。ゼミから生まれた仕事による20252026年ののべ受益者見込みは261名にのぼります。

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ワークルールシフトスクールの参加者(写真提供:一般社団法人NIMO ALCAMO)

スクールでNIMO ALCAMOが伝えているのは、「Talk with _」で実践してきた方法論を、他の現場でも再現できるかたちに落とし込んだものです。その中心となるのが、働けない状態をつくっている「排除の壁」を可視化する、という考え方です。


働きづらさを抱える人と仕事のあいだには、その人を労働環境から締め出してしまう「壁」があると古市さんはいいます。

一般的な就労支援は、この壁を本人が乗り越えられる力をつけてもらおうという考え方が基本になっていますが、これに対してNIMO ALCAMOが提唱するワークルールシフトでは、壁そのものをなくしていこうと考えます。
では、その「排除の壁」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

まず出発点になるのが、本人の「本音」をそのまま聞くことだと古市さんはいいます。

「三割の力で音楽を聴きながら働きたい」という言葉を、「そんな甘えは通らない」と切り捨てるのか、「三割なら働けるんだ」と受け取るのかで、支援の方向は変わってきます。本人の言葉の中に、実は「社会のルール」との衝突が隠れている。それを可視化していくことがこのスクールの核心です。

壁は三つあると古市さんはいいます。

ひとつは雇い主の壁。「この基準を満たさないと雇えない」という採用ハードルです。ここに対して有効なのが、経済合理性に訴えるアプローチです。時給制の場合、ゆっくり作業をする人を雇うと原価が上がりますが、納品制にすれば作業が遅くても一つあたりのコストは変わりません。「遅さ」が経営上のストレスにならない構造をつくることで、雇い主の壁を崩すことができると古市さんは説明します。

ふたつめは同僚の壁。「あの人だけ配慮されていてずるい」という不公平感です。これに対して紹介されたのが、欠勤連絡を禁止するルールを全員に適用している工場の事例です。特定の人への特別扱いではなく、全員のルールとして変えてしまうことで、不公平感そのものをなくす発想です。

三つめは消費者の壁。「消費者の期待に応えるにはサービスの質を下げてはいけない」という懸念です。ここで大切なのが、消費者との合意をあらかじめつくることだと古市さんは考えます。既に国内でも、レジに椅子を置いて座って働く取り組みや、「いつ届くかわかりません」を最初から掲げたネットショップの事例が生まれています。これらはいずれも消費者の期待値を変えることで働く人の負担を軽くする試みです。「Talk with _」でいえば、アバター接客がこれに該当するでしょう。

企業への展開

スクールを通じた支援団体への広がりが進む一方、当初から描いていたもうひとつの柱<企業への展開>には難しさを感じているそうです。
地元信用金庫内の社内ベンチャーを通じてつながった生鮮食品チェーンとの取り組みでは、経営者はNIMO ALCAMOの取り組みに強く共感し、加工場でのシフトフリーの製造仕事や店舗清掃の仕事づくりを一緒に検討する段階まで発展しましたが、現場の管理職 クラスの合意が取れず、現在は中断しています。
「経営者は『ぜひやりたい!』と関心を持ってくださったのですが、現場で管理する方々は『夕方2〜3時間で働く人を受け入れるなら本社から誰か人を寄こしてほしい』という。経営者のニーズと現場のニーズがずれていたんですね」と古市さんは振り返ります。

企業との対話の難しさについては、木戸さんが話してくれました。
「その組織がどんな思いからできて、どんな文化やルールがあるのかを知らないままワークルールシフトを導入しようとしてもアレルギー反応が起きてしまうんです」。
そこで木戸さんがはじめたのは、管理職の方たちにこの「Talk with _」を実際に見に来てもらうことでした。

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理事の木戸伸幸さん。

「来てもらうと、管理職の方それぞれの課題意識が見えてくるんです。人口減少を心配している人もいれば、農林水産業の将来を心配している人もいる。就労に関する課題の入り口は人によって違うということがわかりました」。

共通して大切なのは、まず経営者・管理職・現場がそれぞれ何を求めているかを把握し、そのコンセンサスが取れるところから実践を始めることだと木戸さんは言います。
今後は企業と定期的に意見交換しながらパートナーシップを築いていく形にアプローチを変え、「一緒にどうしたらいいかを考えていくスタンスで臨んでいきたい」と話してくれました。

前提を疑い、仕組みをつくりなおす

この日、お話しを伺いながら私が繰り返し感じたことがあります。それは、古市さんも木戸さんも、現状の仕組みや前提を「なぜそうなっているのか」と問い直す姿勢を徹底しているということです。
シフトで働くのが当然だという前提を疑い、最低賃金という制度が誰かを排除していないかを問い、消費者が「当たり前」だと思っていることを、本当にそうなのかと立ち止まる。そして「おかしい」と感じたら、既存の枠の中で解決しようとするのではなく、枠そのものを変えようとする。
その思考はどこから来るのでしょうか?

古市さんはご自身を「人に合わせるのがストレスという自分自身の特性が、福祉的な支援の枠から自由にしてくれた気がする」と分析します。「働けない若者と出会ったとき、寄り添って伴走するより、自分の仕事の一部をやってもらう、という感じで関わってきました。それがこの発想の原点かもしれない」。また、「ヒントとなる事例を知ることは大事だと思う」とも話してくれました。

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木戸さんは学生時代、建築を学びながら「ただ建物をデザインするのではなく、プロジェクトや社会課題の解決そのものをデザインしたい」と仲間と語り合っていたといいます。その視点は今、企業の組織文化や関係性を丁寧に読み解きながら、新しい働き方をつくる仕事につながっているように感じられました。

この視察の中で、私たちがとりわけ印象に残った言葉があります。それは、ワークルールシフトスクールの講師に招いた村中直人さん(一般社団法人子ども・青少年育成支援協会代表理事)の講演に触れながら、木戸さんが紹介してくれた「レンガモデルから石垣モデルへ」という考え方です。

レンガモデルとは、同じ形・同じ大きさのレンガを整然と積み上げていく社会を例えたものです。均質な人材を前提に、同じルールで、同じペースで働くことが求められる。その均質性は一見安定しているように見えますが、「レンガの形」に合わない人は、そもそもそこに加わることができません。
一方、石垣モデルは、大きさも形もバラバラな石を、互いの凸凹を活かして組み合わせていく社会です。ひとつひとつの石は不揃いでも、それが収まる場所があり、組み合わさることで強固な全体をつくることができます。均質さではなく、多様さそのものが強度の源になるという考え方です。

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お話をもとにちばのWAが作成

そして村中さんはこう言っていたといいます。「石垣モデルの社会に登る入り口は二つあります。少数派をエンパワメントしていく道と、多数派を耕す(カルティベートする)道です。この二つは別々の入り口ですが、登り着く先は同じ社会です」と。

木戸さんは「いまレンガモデルにいる人達が、『実は自分たちはレンガではなくて石垣の石だったのでないか』と気付くところから始めるのが重要ではないか」といいます。

ひとつの入り口から両者を登らせるのではなく、道は分けつつも両者に働きかけて同じ山頂を目指すのは、まさにNIMO ALCAMOの取り組みです。

働きづらさや「働きたいけれど働けない」という状況は、特定の誰かだけの問題ではなく、誰の身にも起こり得る問題です。今、問題なく働けている人でも、病気や怪我、家族の介護、あるいは職場の人間関係のつまずきひとつで、明日には「働けない側」に立つことがあります。働くことへの脆弱性は、程度の差こそあれ、誰もが抱えているものです。

だとすれば、働きづらさを抱える人の問題を「支援が必要な人たちの問題」として切り離すのではなく、「私たちみんなにとっての問題」として社会全体で考えていく必要があるのではないでしょうか。「多数派を耕す」という視点は、就労支援を特別な取り組みとして外側から見るのではなく、自分たちの問題として引き寄せるために必要な視点に思えます。

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商品と一緒に並べられているカウンセリング招待券。

私たちにできることは何か ― 千葉から考える

福祉車両の販売・整備の会社を経営する小野田さんが「目からうろこ」と感じたのは、「そもそもシフトがない働き方があるということ」だったそうです。自動車整備という業種は、安全や品質への責任が重く、「誰でもできる仕事の切り出し」が難しいと感じていましたが、今回の視察を通じて「チャイという業種でここまで設計できるなら、自分たちの業種でも何か見つけられるはずだ」という手応えを持ち帰ったようでした。消費者の期待値を先に設定することで働く人の負担を減らすという発想は、整備業という「安全・品質への期待が高い」業種にとっても、何らかのヒントになるかもしれません。

また、キャリアデザイン研究所の石黒さんは、「支援」と「仕事づくり」のすみ分けに関心を持ったそうです。働く前と働き始めてからの支援は支援機関が、働く場の創出はNIMO ALCAMOのような事業者が担うというスタイルは、千葉で支援団体と企業・事業者がどう連携していくかを考える上でも、ひとつのヒントになるかもしれません。また、視察後は「自団体でもできることがあるかも」と、NIMO ALCAMOが企画する「小さな仕事づくりゼミ」への関心も話してくれました。

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小野田さん(左)、石黒さん(右)

私たちが本事業を通じて見てきた課題のひとつは、企業が「受け入れたい」と思っていても、どうすればいいかわからないという状況です。
「仕事の切り出し方がわからない」「誰がサポートするのか」「他のスタッフとの公平感が保てるか」。
こうした疑問に、NIMO ALCAMOの実践は具体的なヒントを与えてくれます。

「人が仕事に合わせる」のではなく、「人に合わせて仕事をつくる」というワークルールシフトの発想は、すぐに取り入れられるものではないかもしれません。でも「なぜこのルールはこうなっているんだろう」と問い直す姿勢は、今いる場所から誰でも始められることです。

均質な人材を積み上げる「レンガ」の社会を目指すのか、一人ひとりの凸凹をそのまま活かす「石垣」の社会を目指すのか。
どちらを目指すかは、制度や支援の話である前に、私たち一人ひとりの選択でもあるのではないでしょうか。

この記事が、ご自分の職場や地域でそう問い直すひとつのきっかけになれば幸いです。

(2026年6月2日 チャイ専門店 Talk with _ にて)

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一般社団法人NIMO ALCAMO https://nimoalcamo.com/
チャイ専門店「Talk with _」:大阪府大阪市住之江区北加賀屋2-4-2 NAGAYArt No.1

Instagram
「Talk with _」のHPではチャイを購入することもできます。

https://www.talkwithchai.jp/

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